年金手帳

国民年金は20歳以上60歳未満の方に加入義務が有り、加入者は保険料を納付しなければなりません(国民年金法第7条第1項1号・第88条第1項)。

会社にお勤めしている方は、厚生年金に加入しているので保険料の納付義務は会社に有ります。従って、保険料が払えなくなる心配をする必要は有りません。

しかし、個人事業や学生、無職の方等は保険料を自分で納付しなければならないので、収入が少なかったり就職活動中で手元にお金が無い様な場合には、どうしても保険料の納付が辛くなる事が有りますよね。

そんな方達の為に用意されているのが国民年金の猶予制度です。保険料を納付するのがキツいときに申請をすれば、一定期間納付を待ってくれるという便利な制度なので、資金繰りが厳しい時には積極的に利用したいものですね。

しかも、従来30歳未満の方が対象だった若年者納付猶予については、平成28年7月以降は対象範囲が50歳未満の方まで広げられた事もあって、最近注目を浴びています。

そこで、ここでは保険料の猶予制度の概要や申込方法等、また、似た制度である「保険料免除制度」との違いなどについても解説していきます。

国民年金の猶予制度とは?免除との違いは将来の年金受取額が増えるかどうか!

国民年金の猶予制度とは、経済的な理由から保険料を納付するのが難しい場合に、本来当月分を翌月末までに納付すべき所を、一定の期間待ってくれるというものです。制度上は、保険料を納付するのが難しい場合に保険料を免除してくれる「保険料の免除制度」の一部となっています。

猶予制度と免除制度を図解すると、以下の様な感じです。

保険料免除制度

保険料免除制度には、「法定免除(条件を満たすと、法律上当然に保険料が免除される)」と「申請免除(要件を満たす方が申請する事で、一定の期間保険料が免除される)が有ります。

(参照元:国民年金法第89条・90条)

そして、申請免除の中に今回の記事で取り上げる猶予制度である「学生納付特例」「若年者納付猶予」「50歳未満納付猶予」が有るのです(国民年金法第90条の3・16附則19条・26附則14条)。

猶予と免除の違いは、読んで字の如く保険料の納付が「猶予される」か「免除される」かですね。しかし、それ以上に大きな違いが有ります。それは以下の表を見れば分かりますよ。

 年金受給資格期間への算入年金額への反映障害・遺族基礎年金の受取り
免除
納付猶予
(学生納付特例含む)
×
未納×××
:免除割合によって年金額に反映される割合は異なります。また年金額に反映されるのは国庫負担部分のみです。

猶予の場合も免除の場合も、適用期間中は将来年金を受け取る際の受給資格期間への算入がされますし、ケガや病気等により障害を負ったり死亡した場合に、障害年金や遺族年金を受け取る事も出来ます。

しかし、免除の場合は免除期間中も将来の年金額に反映される一方で、猶予の場合は猶予期間中に関しては将来の年金額は増えないのです。

これはある意味当然といえば当然の事ですね。免除は「免除期間中の保険料はもう納付しなくて良いですよ」と言っているのに対して、猶予は「猶予期間が終わるまでは未納とせずに待っていてあげますよ」と言っているに過ぎないからです。

従って、猶予期間が終わってから猶予期間中の保険料を追納しなければ、将来貰う年金額は同じ期間未納だった方と同じになってしまいます。

なお、未納の方は表から分かる様に、将来の老齢基礎年金が貰えないだけでなく、未納期間中に事故等に遭遇した場合の障害・基礎年金も貰う事が出来ません。

猶予制度の対象者

悩む女性

ここからは、国民年金の猶予制度である「学生納付特例」「若年者納付猶予」「50歳未満納付猶予」の対象者について見ていきましょう。

まず、以下の表を見て下さい。

猶予制度猶予の対象猶予割合
学生納付特例学生100%
若年者納付猶予30歳未満の方(※1100%
50歳未満納付猶予
(平成28年7月から新設)
50歳未満の方(※2100%
※1:平成17年4月から平成37年6月までの間において30歳に達する日の属する月の前月までの被保険者期間がある者。
※2:平成28年7月から平成37年6月までの間において50歳に達する日の属する月の前月までの被保険者期間(30歳に達した日の属する月以降の期間に限る)である者。

学生納付特例の対象となるのは「学生」です。年齢については特に要件が定められていないですが、国民年金に加入するのは20歳からなので、「20歳以上60歳未満の学生」という事になりますね。

20歳を超えた学生は学生納付特例の利用が必須!追納するか否かの判断も解説

一方で、若年者納付猶予と50歳未満納付猶予については年齢に関する決まりがあるだけなので、職業などは特に問われません。

なお、いずれの猶予制度の場合も、猶予される保険料は猶予期間中の保険料全額(100%)です。

:国民年金の任意加入者は猶予制度を利用する事が出来ません。

国民年金の猶予制度の収入・所得基準

お金のない女性

国民年金の猶予制度は誰でも利用出来るという訳ではなく、申請者は下表に記載の所得金額以下である必要が有ります(給与収入の金額では有りません)。

猶予制度所得の対象者単身世帯の場合一般世帯の場合
学生納付特例学生本人のみ118万円118万円+38万円×扶養親族等の数
若年者納付猶予本人・配偶者57万円35万円×(扶養親族等の数+1)+22万円
50歳未満納付猶予本人・配偶者57万円35万円×(扶養親族等の数+1)+22万円

参考:ここでいう所得とは、当該保険料を納付する事を要しないものとすべき月の属する年の前年の所得です。なお、1月〜6月(学生納付特例の場合は1月〜3月)までの保険料については前々年の所得です。

例えば、扶養親族等が2人いる過程で若年者納付猶予や50歳未満納付猶予を受ける場合、年間所得は「127万円{=35万円×(2人+1)+22万円}」以下である事が必要となります。

また、上記以外にも生活保護を受けている方や障害者等の為に、以下の要件も設けられています。

  • 被保険者自身又は家族の誰かが生活扶助以外の扶助()を受けている
  • 地方税法上の障害者で、前年所得が125万円以下
  • 地方税法上の寡婦で、前年所得が125万円以下
  • 天災その他の厚生労働省令で定める事由により、保険料の納付が著しく困難

:生活扶助以外の扶助としては、「教育扶助」「住宅扶助」「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」「生業扶助」「葬祭扶助」が有る(生活保護法第11条1項)。

国民年金の猶予制度を利用する際の申請手続き

役所の窓口

以下では、国民年金の猶予制度の申請手続きについて見ていきましょう。

学生納付特例の詳細な申請方法については「学生の年金免除の申請手続き&期限とQA」で解説しているので、そちらを参照して下さい。

納付猶予の申請手続き場所〜郵送でもOK〜

国民年金の納付猶予制度を利用する場合、申請の手続きは住民登録をしている市区町村役場の国民年金担当窓口でする事になります。

後述する申請書は窓口で貰えますし、分からない事が有ったらここで聞く事が出来るので、猶予申請を考えている方は一度窓口に行ってみると良いでしょう。

なお、基本的には申請書類を窓口で提出する事になりますが、役所が遠い方や体が不自由な方は郵送で申請書を提出しても構いません。その場合は、添付書類と一緒に申請書を郵送しましょう。

但し、いきなり郵送するのではなく、添付書類に間違いがないかなどを確認する為に事前に窓口に電話する事をオススメします。

参考:日本年金機構から納付猶予申請書がハガキで送られて来た方については、納付案内等で戸別訪問に来た指定全額免除申請事務取扱者に申請書を渡して納付猶予申請の委託をする事も可能です。

必要書類&納付猶予申請書の書き方

納付猶予の申請に必要な書類は人によって多少異なりますが、全員共通して必要なのは以下の2つです。

  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書
  • 年金手帳又は基礎年金番号通知書

申請書は市町村役場の窓口で貰う事が出来ますが、予め記入しておきたい方や郵送で提出する方の為に、日本年金機構のホームページでも入手する事が出来ます。ちなみに、申請書は以下の用紙です。

国民年金保険料免除・納付猶予申請書

申請書は記入例とセットになっているので、記入例を見れば大体の書き方は分かると思いますが、日本年金機構が親切にも申請書の書き方を動画でアップしてくれているので、気になる方は動画もチェックしてみて下さい。

他の必要書類としては、以下の様なものが有ります。但し、人によって必要かどうかが異なるので、詳しくは窓口で確認した方が良いでしょう。

  • 前年の所得を証明する書類
  • 所得の申立書
  • 雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し
  • 厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写し及びその申請時の添付書類の写し
  • 履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書
  • 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し
  • 保健所への廃止届出書の控
  • その他、公的機関が交付する証明書等であって失業の事実が確認できる書類

:失業等による申請の場合に必要。

国民年金の猶予が申請出来るのはいつまで?期限はある?

国民年金の猶予制度の年度は7月〜翌6月末です。

従って、9月に申請しても12月に申請しても、申請出来るのは翌年の6月末分までです。それ以上先の分については、7月になってから再度申請する事になります。

参考:申請書の「⑭継続希望区分」を「1.する」にしておけば、翌年度以降も同様の申請がされたものとして扱われるので、再度申請する必要は有りません。

また、猶予制度は過去の期間についても申請する事ができ、具体的には申請書が受理された月から2年1ヶ月前まで遡って申請する事が可能です。

猶予申請の結果はいつ出る?

カレンダーと時計

国民年金の納付猶予の申請をしてから、審査の結果が出るまで大体2〜3ヶ月程度かかります。少し長いですが気長に待ちましょう。

なお、過去の期間について遡って申請する場合は、審査結果が出るまでの間に納付案内の電話や文書が送られて来る事が有りますが、気にする必要は有りません。

また、審査結果が出るまでの間に猶予対象期間の保険料を納付した場合は、後日還付を受ける事が出来ます。

猶予期間が終わったら年金を追納するorしないどっち?

年金の猶予期間中は保険料を納付する必要はないです。

しかし、猶予を受けても保険料を納付をしていない事に変わりはないので、放っておくと将来の年金受取額は少ないままです。

そこで、猶予を受けていた方が年金額を増やせる様に、猶予期間中の保険料が納付出来る「追納制度」というものが有ります。

しかも、追納をすれば追納額全額をその年の社会保険料控除として所得税・住民税の計算上差し引く事が出来るのです。将来の年金受取額が増える上に、その年の税金を減らす事が出来るので良い事ばかりですよね。

但し、追納をすれば当然手元のお金は減ります。無理して追納した結果、生活資金が無くなったというのでは意味が有りません。

追納できるのは、例えば、平成29年8月分の追納は平成39年8月末までという様に、追納が承認された月の前10年以内の猶予期間です。

猶予期間が終わってから焦って追納する必要は無いでしょうから、現在の生活や将来の年金額などを考慮して追納するかどうかを決める様にしましょうね。

免除・猶予した国民年金保険料は追納すべきか否かの検討

まとめ

国民年金は納付が義務なので、勝手な理由で納付をしないのは違法です。

しかも、未納になってしまうと老後に年金が貰えなくなるだけでなく障害年金や遺族年金も貰えなくなってしまうので、非常にもったいないですよ。

収入が減ったりお金が無い場合は保険料の猶予制度が有るので、自分が要件を満たしているかをチェックして、満たしているようであれば積極的に活用しましょう。