グラフ

毎年6月末になると国民年金の納付率に関するニュースを耳にしますが、ニュースによるとここ数年きちんと国民年金を払っている方の割合(納付率)は60%くらいしかない様です。

確かに、若い方の中には「年金制度なんて信用出来ない!」「きちんと払っても年金は貰えないのでは?」と思って敢えて払っていない方もいる様なので、未納状態の方はそれなりにたくさんいるのでしょう。

けど、60%程度の方しか国民年金を払っていないというのは本当ですかね?もし本当なのであれば、全体の40%の方が払っていない様な年金制度はすぐにでも崩壊してしまいそうですよね・・・。

そこで、ここでは国民年金の未納率(納付率)に関して過去の推移や世代別の情報などを紹介し、一体国民年金はどれくらいの方が納付しているのかについて見ていきたいと思います。

平成28年度(2016年4月分〜2017年3月分)の納付率は65.0%!過去の推移や世代別の納付率は?

まずは、平成28年度の国民年金の納付率から見てみましょう。厚生労働省が毎年6月末に発表している情報によると、平成28年度の納付率(現年度分 )は65.0%でした(参照元:厚生労働省「平成28年度の国民年金の加入・保険料納付状況について」)。

そして、この数値は5年連続伸び続けています。納付率が上がるのは良い事ですね。

:国民年金には後納制度が有るので、過去に遡って未納分(過年度分)を納付する事が可能です。「現納分」と言った場合は、後納分を除いた平成28年度分(2016年4月分〜2017年3月分)をその2017年4月末までに納付した方の割合を指します。

納付率の推移

次に、過去からの納付率の推移を見てみましょう。なお、グラフの縦軸は納付率(%)、横軸は年度です。

納付率の推移

グラフを見れば分かる様に、国民年金の納付率は長期的に見ると下落傾向にあります。5年連続で納付率が上がっていると言いましたが、それでも昔と比べると大分低いですね・・・。

平成13年度から平成14年度にかけて納付率が大幅に下がっています。これは、平成14年4月施行の国民年金法改正により免除基準が明確化され、免除されない方が増えた為、その方達が未納になるケースが非常に多かった事が原因です。

その後少し回復したのは、若年者の納付猶予制度が導入されたり(平成17年4月より)、免除勧奨を積極的に行った事が原因と考えられています。といっても、それからしばらくはまた納付率の下落が続きますけどね。

そして、平成23年に過去最低の58.6%を記録してから現在に至るまでは納付率が上がって来ていますね。これは、平成24年度から全国的な取組みとして、滞納者に対して特別催告状を発送する様になった事の成果の様です。

年代別(世代別)の納付率

全体としては国民年金の納付率は下落傾向にあるものの、ここ数年は上昇している事が分かりましたね。

次に平成28年度及び平成27年度の年代別(世代別)納付率を見てみましょう。

年代別の納付率

グラフからは、世代によって年金の納付率は大きく異なる事が見て取れますね。

基本的に年齢が若い方ほど納付率が悪いです。50代の方はもう納付終了のゴールが見えて来ていますし、自分が生きている間は年金が貰えなくなる事は無いだろうと考えて、積極的に納付をしているのでしょうか。

一方の若い世代が保険料を払っていないのは、経済的な理由や将来自分が年金を貰えないのではないかという不信感からだと考えられます。保険料を払っても将来年金を貰えないのであれば、払う意味が無いですからね・・・。

若い世代にしっかりと国民年金を払ってもらおうと思うのであれば、安心出来る年金制度の構築が必要ですね。そうすれば、若い方も積極的に納付するでしょう。

【参考】都道府県毎の年金納付率ランキング

日本地図

ここでは、都道府県別の国民年金の納付率(平成28年度現年度分)を見てみましょう。まずは納付率トップ5は以下の通りです。

トップ5都道府県納付率
1島根79.63
2富山77.77
3新潟77.48
4石川75.16
5山形74.92

納付率7割以上の都道府県がランクインしていますね。都会よりも地方の方が納付率は高い傾向にある様です。

次に、納付率ワースト5を見てみましょう。

ワースト5都道府県納付率
1沖縄47.81
2大阪55.91
3東京60.82
4埼玉62.01
5長崎62.26

沖縄がダントツのワースト1位ですね・・・。2〜4位は大阪・東京・埼玉と都会の地域がランクインしています。沖縄は例外ですが、基本的に国民年金の納付率は「地方>都会」という構図が成り立つのかもしれないですね。

参考までに、全都道府県のランキングも載せておきますね。表示順は北⇒南の順(北海道から始まって沖縄で終わり)です。

都道府県納付率(%)順位
全国65.04
北海道64.6334
青森66.2130
岩手73.698
宮城65.4631
秋田74.177
山形74.925
福島66.2229
茨城63.2840
栃木63.2939
群馬68.3927
埼玉62.0144
千葉62.741
東京60.8245
神奈川63.9238
新潟77.483
富山77.772
石川75.164
福井74.346
山梨69.3322
長野73.310
岐阜73.579
静岡70.4219
愛知68.8925
三重71.8213
滋賀71.3515
京都67.4528
大阪55.9146
兵庫64.1936
奈良70.3420
和歌山72.8411
鳥取72.7512
島根79.631
岡山69.1923
広島70.5218
山口71.2216
徳島68.4826
香川71.4614
愛媛70.5817
高知69.9821
福岡62.342
佐賀68.9824
長崎62.2643
熊本64.2935
大分64.0937
宮崎65.1332
鹿児島64.9133
沖縄47.8147

自分の住んでいる都道府県はどうですか?もし納付率が低くて、自身も納付していないのであれば納付率のアップに貢献してみてはどうでしょう。

厚生労働省の発表している国民年金の納付率(未納率)にはカラクリが有る!?

不思議

上述の通り、国民年金の納付率は平成28年度で65.0%です。逆にいうと、全体の約4割が納付出来ていない(未納率:34.9%)という意味ですよね。

しかし、この納付率(未納率)には良い意味のカラクリと悪い意味のカラクリが有るので、公表されている数値をそのまま鵜呑みにするのは良くありません。

一体どういう事なのでしょうか、良い意味・悪い意味のカラクリをそれぞれ見ていきましょう。

良い意味のカラクリ・・・制度全体の未納者は3%に過ぎない!

国民年金の納付率が65.0%といった場合、この割合は国民年金第1号被保険者(自営業者・学生・無職等)に限った話です。

日本での公的年金の加入者状況を見てみると、平成28年度では以下の通りとなっています(参照元:厚生労働省「公的年金制度全体の状況・国民年金保険料収納対策について(概要)」)。

種別人数(万人)
国民年金第1号被保険者等
1,575
(内、保険料納付者:813
免除者:356
学特・猶予者:227
未納者:179)
国民年金第2号被保険者等
4,264
国民年金第3号被保険者
889
未加入者
19
合計
6,728
参考:平成28年度末の国民年金第1号被保険者の数は、1575万人で前年度末と比べると93万人減少しています。これは、主に国が厚生年金保険の被保険者数を増やそうと、パート従業員などにまで加入範囲を広げた事が原因とです(参照元:日本年金機構リーフレット)。

このグラフをみてまず分かる点、それは、公的年金制度の加入者は全体の約80%(*)が、厚生年金や共済組合に加入している「国民年金第2号被保険者等(要はお勤めの方)」とその配偶者である「国民年金第3号被保険者」である、という事です。

* (4,264万人+889万人)÷6,728万人=76.6%
国民年金第2号被保険者の方の保険料は事業主が払うので、事業主が不正等をしない限りは未納になる事が有りません。また、その配偶者である国民年金第3号被保険者については、その負担分は第2号被保険者の保険料に含まれています。

従って、第2号・第3号被保険者については、未納者としてカウントされる事が基本的にありません。

第3号被保険者分の国民年金保険料は、独身の第2号被保険者も含めて制度加入者全体で負担しているので、フリーライドだ!という批判的意見もあります。

年金の納付

とすると、国民年金が未納になる可能性を秘めているのは、自営業者等である国民年金第1号被保険者ですね。彼らは自分で保険料を納付しないといけないので、どうしても忘れたり資金繰りの関係で後回しになったりしがちです。

但し、その割合を見てみて下さい。未納者は全体の3%(*に過ぎないのです!制度全体としてみると、殆どの方が納付をしており、納付出来ていない方はほんの一握りである事が分かりますね。

* 179万人÷6,782万円=約2.7%
従って、「年金の未納者が40%もいるから年金制度は崩壊寸前だ!」と言われる事が有りますが、この理屈は間違っているのです。

確かに、年金制度自体がうまくいっているとは言い難いですが、少なくとも年金滞納者が全体の3%いるからといって、年金制度が崩壊する事はないでしょう。

「年金制度はいずれ崩壊するから」というセールストークで金融商品や保険商品を売ろうとする方もいるので、口車に乗らず判断する様にしましょうね。

ちなみに、未納者を減らす事は大事ですが年金未加入者が19万人もいるという点はさらに見逃せないですね・・・。納付をしていないのはまだしも、加入が義務の国民年金に加入していないという方がいる事自体おかしいです。早急に何とかしてもらいたいものですね。

悪い意味のカラクリ・・・免除者・猶予者は納付率の計算方法上除外されている!

悩む女性

国民年金の納付率は65.0%あり未納率は40%弱に過ぎないですし、ここ5年間は納付率が伸び続けています。しかも、上述の通り全体としてみると未納率は3%程度にしかならないので、将来の年金受取りを心配する方からすると、なんだか安心しても良さそうな感じがしますよね。

しかし、ちょっと待って下さい!この納付率65.0%という数値が、誰を対象にして計算されているか知っていますか?

普通であれば、国民年金の加入者全員を対象に納付率を考えますよね。しかし、実際の計算上は「法定免除者・申請全額免除者・学生納付特例者・納付猶予者」については納付率の計算対象から省いているのです。

納付率は以下の計算式によって算出されています。

納付月数÷納付対象月数×100

参考:納付月数は、実際に当年度中に納付された月数で、納付対象月数は当年度に保険料として納付すべき月数(法定免除者・申請全額免除者・学生納付特例者・納付猶予者を除く)を指しています。

これらの方は、国民年金の加入者だけど保険料を免除されている、若しくは、納付を猶予されている状態です。

免除者はそもそも保険料は納付していないですよね。確かに、受給資格期間としてはカウントされますが、貰える年金は全額納付した方の半分です(全額免除者の場合)。

また、納付の猶予を受けている方は猶予期間中は保険料の納付をしていないですし、猶予期間が終了してから期限までに納付をしなければ未納付者となりますよね。

それなのに、これらの方を計算上除外してしまうのは正しいのでしょうか、正しいとは言えないですよね・・・。

計算方法を考える少年

この計算式で納付率を計算している限り、国民年金の納付率は表面上上がってしまうのです。

それに、年金事務所の担当者は保険料を払っていない方に対して納付を推進するよりも、免除か納付猶予扱いにする方に神経が集中してしまいかねません。「払って下さい!」というよりも「免除や猶予制度も有りますよ!」という方が楽ですからね。

では、免除者や猶予者等も含めた実質的な納付率はどれくらいなのでしょうか。以下で見てみましょう。

:以下の計算は公表資料から独自に行っているもので、公式な数値ではありません。ネットで検索すると平成28年度の実質納付率は40.5%と出て来ますが、そちらとも多少の差が出ます。

年度公表されている納付率(%)実質の納付率(%)
平成28年度65.041.1
平成27年度63.441.4
平成26年度63.141.2
平成25年度60.940.5
平成24年度59.040.3
計算の前提:
・根拠数値は「平成28年度の国民年金の加入・保険料納付状況について」記載のものを使用。
・全額免除者数は万単位の数値を使用
・納付月数は万単位の数値を使用
・納付月数は現年度分納付月数を使用

例:平成24年度は、免除者数587万人・納付月数9,010万月・納付対象月数15,274万月なので、
9,010万月÷(15,274万月+587万人×12月)×100=40.371(40.3%)

公表されている納付率と比べると、20%程度下がりましたね。実質的には4割程度の方しか国民年金を納付していない、という事です。

さらに、少し前の話ですが年金問題に積極的に取り組んでいる代議士の河野太郎氏が、厚生労働省から入手した資料をもとに世代別の年金納付率の資料を作成した事がテレビで話題になりました。

それによると、平成25年度の年齢層毎の納付率は以下の通りだそうです(参照元の記事は執筆時点では削除されていたので、下記数値は参考程度にして下さい)。

年齢層納付率(%)
20〜24歳21.4
25〜29歳31.7
30〜34歳38.2
35〜39歳42.1
40〜44歳43.0
45〜49歳42.9
50〜54歳47.5
55〜59歳53.7
(削除された記事はInternet archiveのページではご覧頂けます⇒参考:年金保険料の「機械的」納付率|河野太郎公式ブログ

20代の納付率は他の年代と比べると、かなり低い事が分かりますね。学生には学生納付特例制度が有るので、20代前半の納付率が低くなるのは仕方無いですが、それにしても低過ぎですよね・・・。

国民年金が未納だとどうなる?

国民年金の未納率が約4割で、免除者まで含めると実質約6割が未納という事が分かりました。彼らは、お金が無かったり将来への年金制度への不安などから未納状態になっていると考えられますが、国民年金が未納になるとどうなるのでしょうか?

困る老人

まず、前提として国民年金の納付は義務なので、納付しない事は法律違反です。従って、未納になる事と免除を受ける事とは話が全然違います。

免除を受けているのであれば、その期間は年金受給資格の期間に入りますし、老齢基礎年金の半分は受け取る事が出来ます(全額免除の場合)。

しかし、未納の期間については、将来年金(老齢基礎年金)を貰う際の受給資格の計算期間に含まれないですし、将来の年金額も増えません。

また、未納だと老後に年金(老齢基礎年金)が貰えなくなるだけでなく、障害年金や遺族年金も貰えなくなってしまいます。

事故などに遭って働けなくなった際に年金が未納だと、かなり厳しい状態に追いやられてしまいますよ。

年金を払えない方は積極的に免除制度を活用すべきですが、それよりもまずはきちんと納付する方法を考えるのがベスト、という事ですね。

なお、年金が未納だと損だという点に関しては、「年金の未納が大損な理由」で詳細に解説しているので参考にして下さい。

まとめ

低迷していた国民年金保険料の納付率ですが、ここ数年間は上昇傾向に有る事が分かりましたね。

なお、国民年金第1号被保険者(特に若い世代)の未納のケースが多いです。国民年金の納付は、自分の老後に関わる問題です。周りに払っていない方が多いからといって自分も払わなくても良いという訳ではないですよね。

納付をした事で老後に困る事は無いでしょうが、納付しなかった事で老後困る可能性は十分に有ります。国民年金の保険料はしっかりと納付する様にしましょうね。